ばあちゃん…

『しゃもじがない!』
とばあちゃんが騒ぎ出した。
以前、メガネがないと騒いで家族総出で探したあげく、
それがタンスの肌着入れで発見されたことがあるだけに、
またかぁ…と誰もがため息をつく。
『またタンスに入ってるんじゃないの?』
『そんげなとこに、しゃもじをしまうもんね!』
と怒っているけど、メガネだってそんなとこにしまわれていたじゃないか。
最初はほったらかしにしていた私たちも、
しゃもじの行方が気になりだした。
またしても皆がおよそしゃもじがなさそうな所を捜索にかかる。
私はトイレとお風呂場。
母は庭とガレージ。
馬鹿馬鹿しいけど、時々なぜここにこんなものが?
というものが発見されることもあるのだ。
ばあちゃん自身も自分が信用ならないのか、
仏壇やら押し入れやらを探している。
『ほんとにないねぇ…どこにいったんだろうね』
『この前、叔母ちゃんが来てたから間違えて持って帰ったんじゃないの?』
と、全員あきらめムード。
結局古いしゃもじを使ってその場をおさめた。
翌日の昼間に味噌汁を作ろうと台所の引き出しを開けたら、
そこにしゃもじが…
誰もこういう普通にしゃもじがありそうな場所を探さなかったのですね。